置場
妄想文を思いつくままに書き散らしています。更新頻度は低めの予定です。
2007.07.21
「地球へ・・・」ジョミー×ブルー
アニメ15話を見て。おかえりを忘れていたなと思い、書きました。16話の後には出せなくなりそうので、今のうちに上げます。
おかえりなさい
あの人だった。あの人だった。
届いた思念は確かにあの人のものだった。
はやる心を抑え、彼のいる部屋へと向かう。だが途中から足は速められ、それは次第に駆け足となっていく。すれちがう者たちからは驚きと少しの好奇を向けられたが、そんなことに構ってはいられない。早く速く、一刻もはやく、あの人のもとへ。
「ブルー!」
息を切らし駆け付けると、ベッドを取り囲んでいたドクターと長老たちが振り返って目を丸くする。
「ソルジャー、お静かに!」
ドクターの叱責も耳を素通りする。早足で、脇目もふらずに彼――ソルジャー・ブルーのもとへ向かった。
ベッドの周囲にはやわらかな空気が漂っている。その中に沈む彼は、目を閉じたままだ。
ちょうど彼が長い眠りについていたときを思わせるその顔に、一筋の不安がよぎる
「ソルジャー・ブルー…?」
小さく呼びかけると、
「なんだい、ジョミー」
思いもよらぬしっかりした声で応じられ、安心と同時に懐かしさがとめどなく胸に去来する。
彼の肉声を聞くのは、いつ以来だろう?
見つめていると、まぶたがピクリと動いた。開かれ現れるのは、宝石のごとき瞳。
「ブルー!」
微かな笑みを浮かべたブルーの腕がこちらへ緩慢に伸ばされる。それを両手で握りしめると、頼りない力で握り返された。
まだ、回復しきっていないのだ。
「すまないが下がってくれ」
彼と話があるのだ――そう言うと、一部始終を見守っていたドクターと長老たちは黙って頭を下げ、退出した。
随分慣れたんだね、と彼が呟く。何のことかと一瞬考えたがすぐに今の命令のことかと思い当たり、ええ、と返した。それきり、しばしの沈黙が場を支配する。話したいことはたくさんあったはずなのに、いざとなると口がうまく働かない。
一層しんとした部屋に、彼と二人。ますます懐かしいときが思い返される。
「懐かしいな」
よく君はここに来て座り込んでいたね。
たった今考えていたことをそのまま読み取られてしまったようなその言葉にはっとする。思念が漏れていたのだろうか?コントロールは大分効くようになったと思っていたのだが――
そんな思いにおかまいなしに、彼は言葉を続ける。
「君は…変わらないね」
言われた言葉に胸が詰まり、手には思わず力がこもる。すると、そうっとやわらかく握り返された。視線がひたと合わせられ、
「いや、変わってしまったのかな――とても」
「ブルー、僕は…」
守れなかった人たちを思う。救えなかった命。
大切な――大切な仲間だった。
「――っ、」
合わせた視線をそらし、床へ向ける。情けない態度をさらしたくない。だが彼の顔を見ていると、あの吸い込まれそうな紅い瞳の前に何もかもさらけだしてしまいそうになる。
手も離そうとしたが、彼の手はそれを許さずしなやかな動きで絡み付いてきた。
ここにいるよ。
届いたのは思念か肉声か。
ブルーがゆっくりと身を起こしていく。あわてて手を貸そうと背中に手をあてていると、いつの間にか間近に迫っていた自由な方の手にサラリと髪をかきわけるようにして――なだめるように撫でられた。
「僕はここにいるよ」
聴こえたのは、確かに声帯から発せられた声だ。
ああ、どうしてこの人はこんなにも。
彼の背中にあてた手をそのまま自身に引き寄せるようにして、抱き締める。
「ブルー、ソルジャー・ブルー」
上げた声は、まるで泣き声のように震えていた。いや、涙は出ていなくとも、自分は確かに泣いていたのだろう。
「――おかえりなさい」
ずっとあなたにそう言いたかったんだ。
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