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妄想文を思いつくままに書き散らしています。更新頻度は低めの予定です。

2024.09.21
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2007.12.16

「親子話の一片」は削除しました。

サイト内を整理しました。増えてきた女体化関連の記事は、何てことないネタメモも親子話もすべて女体化カテゴリーに入れています。
しかしこうしてみてみると最近の更新が女体化ばかりなので何か申し訳ないです。そしてカテゴリーに燦然と輝く「女体化」の文字がとても恥ずかしい… 耐えられなくなったら名前を変えるかもしれません。

自覚その3
女性ブルーでジョミーと親子話です。ご注意ください。















 自覚 3


「ジョミー、これからみんなで遊ばない?」
「急いでるから無理!」
 ヒルマン教授の授業を終えて解放感に満ち溢れた表情の生徒たちの中を、少年は誘いも断り全速力で駆けていった。
「ソルジャーの授業があるんだってさ」
 残念そうに見送る少女を慰めるように誰かが言うと、えー、いいなあと近くにいた少年が心底うらやましそうな声を上げた。
「でも、あれでソルジャーけっこう厳しいっていうぜ」
 横槍を入れられるが、彼はめげない。
「それでも、ソルジャー・ブルーが訓練してくれるならいいなあ、おれ」
「…ガキとはいえ、お前も男だな」
 ちなみにそれは俺も同意する、と傍で話を聞いていた年長のキムが意味深に頷きながら肩を叩いてきたので、意味が分からずに彼は首を傾げた。

「ガードが甘い」
 びしりと思念で弾かれ、痛みに体が震える。そろそろと目を開けると、眼前のソルジャーの常より厳しい顔が目に入った。彼女の口元は一部の隙もなく引き結ばれており、目はぴったりと閉じられている。
「集中するんだ」
 妥協を許さない声音に告げられ、ジョミーは再び目を閉じた。
 ソルジャー・ブルーの訓練は厳しい。それはもう、泣きたくなるほどに。……実は本当に何度か泣いてるなんて、誰にも言えない。しかしそれは今までの「ソルジャー」としての彼女からも「母親」としての彼女からも見られなかった一面であり、恐らく知る者の少ないだろうその姿に触れられるのは嬉しくもあった。
 彼のサイオン操作がなかなか上手くいかないのは、強すぎる力であるため調節が難しいからだろうという。
「それは他のミュウには分かりにくい感覚だろうからね」とはブルーの言だが、確かに彼女と訓練するようになってから、ジョミーの思念操作の能力はめきめきと上達していった。彼女の指導は厳しいが、無駄なく的確だ。ソルジャーにも、コントロールで失敗するようなことはあったのと尋ねると「もちろん」と返されたが、ジョミーには、自分のようにブルーが失敗する様というのは想像するのが難しかった。

「今日はここまでにしようか。お疲れさま」
「ありがとうございました!」
 挨拶を口にした途端、気力と共に切れてしまった体力のおかげでへたりこむジョミーに、ブルーは疲れを感じさせない涼やかな笑みを向けた。おいでと手招きされ、逆らうことなんて思い付きもせずにふらふらと近寄っていく。すると、汗で張り付く髪の毛がかき分けられ、現れた額にキスされた。久しぶりのその感触に驚く間もなく、
「誕生日おめでとう、ジョミー」
 与えられたのはそんな予想外な言葉で。
「今日で7歳だろう?」
 確かにそうだ。だが、こんなふうに彼女に祝われるのは初めてのことだった。おまけにシャングリラでは子どもの誕生日は月毎に一斉に祝われるのが基本であるため、今日が誕生日という意識さえも薄かったほどだ。
「今までは忙しいばかりで何も出来なかったから。……プレゼントもあった方がいいのだろうけど」
 実は何も用意できていないんだ。すまなそうに告げるソルジャー・ブルーの眉の下がった表情は全くもってレアなもので、動揺したジョミーはブンブンと大きく首を振った。それでも、ブルーは重ねて尋ねる。
「欲しいものは?ジョミー」
 ――本当はこんなことはいけないんだろう、とジョミーは思う。『ソルジャーたる者、皆に平等でなくてはならない』とは訓練のたびに彼女が使う言葉である。けれどそれを破ってしまうくらい、自分はソルジャーに『特別』扱いされているのだ――そう思うと、嬉しくて。

 それなら、あなたがぼく一人のものならいいのに。

 ちらりとかすめた思考は、訓練の成果か彼女には聞こえなかったようだ。その代わり。
「今日は、ずっと一緒にいてくれる…?」
 届くか届かないかの声で呟かれたのは、それさえも叶うかどうか分からないような願い。消え入りそうに小さなそれは、それでも確かに彼女に届いた。柔らかな腕が、ギュッとジョミーを抱きしめる。
「もちろんいいよ。…秘密の場所に連れていってあげる」
 移動するよと言われ身構えた次の瞬間には、それまでとまるで違う景色が目の前に広がっていた。
「わあ…」
 支えるブルーの腕から、思わず身を乗り出す。
「すごいや」
 眼前には、雲海にて優雅に身を浮かべる、白銀の船体。
 ジョミーは船の中で生まれ育ったため、これまで船外へ出たことは一度もなく、よって船外から船を眺める機会もなかったのだ。
「見るのは初めてだろう?」
 雄大なそれに触れたいという欲求を抑えきれず、届きそうな錯覚を起こして手を伸ばす。しかし。
「……?」
 薄い膜のようなものが、彼の腕が一定以上伸ばされることを妨げた。首を傾げるジョミーを見て、ブルーはクスクスと笑う。
「シールドを張っているんだよ。もう少し広げてみようか」
 その言葉通り、手の先にあった膜はすぐに感じられなくなったので、ジョミーは腕を思いきり伸ばしてみた。もちろん、見た目よりずっと遠くにある船にそんなことで触れられるわけはなかったが、それでも不思議に満足感があった。
「これが、シャングリラ……」
「ああ。ここが、皆が――君が住む船だよ」
 やはり、彼は強い。初めてのテレポートに動揺するでもなく、地に足のつかない今の状態も恐れていない。
 指導者の器だ、と改めて確信したブルーの耳が、少年の小さな呟きを捉える。
「ソルジャーは、船と、船にいるみんなを守ってるんだね」
 それがどれほどのことなのかは分かっているつもりだった。しかし、視界が与える説得力は、何より強くその困難さを知らしめるものであり。
「ぼくも、みんなを守れるようになりたい」
 口から出てきたのは、これまでにないほどの強い使命感による言葉だった。
「なれるよ。きっとね」
 まぶしげに船体を見つめ続ける我が子の背中を、ブルーは愛おしげに抱擁した。
「地上も見てみようか」
 うん、とジョミーが返事をする間もなく、ヒュウッと風が身の内を抜けていくような感覚と共に体がハイスピードで降下していった。
「う、わ」
 たまらず背後のブルーの服の裾を握り締める。
「怖い?」
 問われ、首を大きく左右に振る。胸を占めるのは恐れではなく、未知への深まる期待だ。
 そしてあっという間に地上までの距離は狭まり、建物の一つ一つが細部まで視認できるほどに近付いた所でスピードが落とされた。
「手を貸して」
 言われるままに差し出せば、握り締める彼女のそれの冷たさにドキリとする。
 掴まれた場所から、ふっと血の引くような感覚が生じた。
「……これで、私以外に君の姿は見えなくなったから大丈夫。シールドは解いてしまうから気をつけて」
 すぐに、それまで体の周りを覆っていた膜は消え去ったようで、代わりに全身に風がまとわりついてくる。湿気を帯びたそれは、シャングリラの送風システムとよく似ていたけれどどこか違っていたので、ジョミーには不思議な感覚だった。
 ゆっくりと大きく旋回しながら目に映る景色の新鮮さに、ジョミーの目は釘付けになる。好奇心のままに見回すうちに、進路方向よりやってくる、住宅地らしく今はまだ人気のない道を歩く親子の姿が目に留まった。手をつなぎ、何事か話しかけながら歩く少年の姿はジョミーよりもまだ幼く、優しい目で応じる母親は、ブルーよりずっと年嵩に見えた。彼らと距離が縮まってきたので、ブルーはぐんと速度を上げた。さっと近付き、風のようにその脇を過ぎていく。通り抜ける瞬間に、子どもの一際高い声が耳についた。
「ねえ、ママ!」
(ママ?)
 耳慣れない言葉に、疑問が沸き起こる。
「母親のことを、そう呼ぶんだよ」
 ジョミーの疑問が直接伝わってきたので教えてやると、彼は目を丸くした。
「じゃあ、ソルジャーもママって言われるの?変なの。聞いたことないや」
「それはそうだ。ママというのは基本的に子どもが母親に向ける呼び名だからね。僕をそう呼べるのなんて君しかいないよ」
 そう言った途端、ジョミーが急に顔をうつむけたことを、周囲に気を配りながら今度は方向を上空へと展開したブルーは気付かなかった。

 時間の許す限りを地上で過ごした後、暮れて濃くなる空の色を見たブルーが船へ戻ろうとすると、ジョミーは嫌嫌と幼子のように首をふった。
 シャングリラの中では、ブルーは色々な人に囲まれ、またジョミーとは遠い所に行ってしまう。今日という日に他の誰も割り込ませたくないのだという気持ちがダイレクトに内へと響いてきたので、それなら、とブルーは直に青の間へと飛んだ。ヒュン、と一瞬のうちにたどりついた先はベッドの中で、ふかふかの布団に子どもの小さな頭はボフ、と深くめり込んだ。
 ふかふかの寝具は驚くほど柔らかでありながら適度の弾力を持ち、念入りに手入れされているのが伝わってくる。そんな些細なことからも、そのベッドの主が特別なのだということが示されているようで、単純に誇らしい。
 光源はベッドにしかなく、だが薄暗さは感じさせず神秘的でさえある静謐なその場所は、主に彼女が休養をとるための私的空間である。訪うことのできる者は限られており、息子といえどもジョミーがそこを訪れたことは数えるほどしかなかった。そのすべてが、彼女が眠りに就いていた頃のことだ。
 その頃のジョミーは、彼女のいない寂しさに耐えかねるあまり長老たちに頼み込みその場へと連れてきてはもらったものの、ひどく疲れているのであろう彼女の眠りを邪魔するのは憚られ、結局寝顔を眺めるだけですぐに退出するばかりだった。今でこそ、彼女が長い眠りを必要とすることはなくなり、日々の訓練で彼女と共にする時間は格段に増えたけれど。あの頃の寂しさを、空白を、ジョミーは忘れてはいない。
「そろそろ夕食の時間だね。運んできてもらおうか」
 ベッド端に腰掛けたブルーが振り返りながら尋ねると、ジョミーはベッドに沈み込ませたままだった体を力の入らない腕で支えながら何とか顔だけは反し、頷いてみせた。それきり力の抜けた腕は崩れ、バタリと倒れる。それでも彼女へ向けた視線はそらされず、瞼は今にもくっつきそうなのを散らすようにパチパチと忙しなく瞬かれている。必死に目を開けようと頑張る彼の姿がおかしくて、ブルーは思わず吹き出した。
「フフ、何しているの。無理することなんてないのに、ジョミー」
 眠いのなら眠ったままでいいといくら言っても、絶対に眠らない、とジョミーは頑張った。
(だって、そしたら終わっちゃう)
 ソルジャーと過ごす日が、特別な日が、終わってしまう。
(…いやだ。まだ足りないのに)
 ブルーのことでいっぱいの、ジョミーのストレートな思いを受け取り、ブルーはゆるりと彼の背を撫でた。
「今はゆっくりおやすみ」
 低く、一定の音程で語りかける。
「今日だけじゃない。いつだって、君のために私の時間はあるんだよ」
 またいつでもおいで。
「待っているから」
 かくり。ジョミーの体からは完全に力が抜け、瞼はあえなく閉じられた。辛うじて残っている意識も、もはや風前の灯である。
 唇が何か動きを見せた気がして、顔を寄せる。すると吐息が耳元を掠め、
「――ママ」
 小さな口が、小さな声で、そう紡いだ。直後、動きの止まった彼女の唇を、子どもの温かな体温がチュッ、と吸い取っていく。
 そうして次の瞬間、彼の意識は完璧に落ちた。



 ――息が止まりそうだ。
 凪いで変化のない自分の心に飛び込み、痛いくらいにざわめかせるのは、いつだってこの子なのだ。
「ママ、か」
 命を育む存在を示すそれは、自分には何て不似合いな言葉だろう。そう思えるのに口は緩み、言いようのない感慨が胸を覆った。
 小さなこの存在が、今の自分の命を繋ぎ止めて生かしている。彼自身の無意識の力と、彼を残すことに対する自分自身の未練で。
 300年も生きて、今さらなんて未練がましい。けれどこの執着が、子どもを持つことによるのだとしたら。
(それを失うことを選択した人類の体制は、何て罪深い)
 倒さなければ。誓いを新たにし、すうすうと眠るジョミーを見やる。大変なことを押し付けようとしていることを思い、募る罪悪感は胸を締め付けた。籠もる諸々の思いを散らすように息を吐き出したところで、異変の予兆を察する。
「――くっ」
 対処するより先にきた眩暈で、くらりと目の前が揺らぐ。
 今日は少し、力を使いすぎてしまった。ジョミーが起きているときは、彼の生命力が助けてくれたけれど。
(反動が来てしまったか…)
 もう、彼を自室まで移動させることさえ辛い。今日は遅くなるかもしれないと船を出る前にジョミーの部屋担当の女性には伝えたけれど、泊まるという話まではしていなかった。だるい体を叱咤しながら動かし、ベッドに乗り上げる。寝息を立てるジョミーの隣に身を横たえ、お互いの体の上に暖かな毛布を被せかけた。
 いくらか楽になった状態で、保育係の女性に呼び掛け、事情を伝える。了承とともに今日一日の簡単な報告を受け、ありがとう、と通信を締め括った彼女はほっと息を吐いた。隣のジョミーからの影響だろうか、少しの間にずいぶんと瞼が重くなってしまっている。
 何のわだかまりもない健やかな寝息を近くに聞きながら微かに笑んだブルーは、そのまま心地よい眠りに落ちていった。





(なんで?!)
 目を覚まし、徐々に鮮明になってくる視界に映るものの正体がブルーの顔だと知ったとたん、仰天のあまり溢れ出しそうになった胸の悲鳴をジョミーは何とか直前で呑みこんだ。間近で見ても衰えないどころかますます綺麗な彼女の寝顔に見惚れつつ、ジョミーは彼女の目覚めを、密着した体の柔らかさに動揺し体を硬くしながら、ただひたすら待ち続けた。
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