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置場

妄想文を思いつくままに書き散らしています。更新頻度は低めの予定です。

2024.09.21
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2007.12.25

「親子な話」の続きというか、時系列でいうと前段階の話です。
発覚から一連のシリーズとは別設定のものですので、お先にこちらを読まれてからご覧下さい。
まだ書けてはいませんが、以下の設定も入っています。
・フィシスは男性
・ジョミーとブルーが親子だと知っているのは、長老などごく一部の者だけ

今は発覚シリーズをやっているので、このシリーズはあまり書けないと思います。そしておそらく書いたとしても部分部分のぶつ切りになりそうです。だってまともに書くとネタがかぶる…
この話で書きたいネタもあるにはあるのですがね~(汗)















 賽はそうして投げられた


 次々と起こる想定外の出来事に、彼はただ唖然とするばかりだった。
 これまで自分を取り巻いていた当たり前の世界が一変し、守られるものから狩られるものへと変わってしまったことが、恐ろしかった。
「初めまして、ジョミー」
 何がなにやら分からぬまま、ミュウとやらの船に連れてこられ、君も仲間だと、そう言われた。
 違うと否定し、頑なな態度を取るジョミーが、ミュウの子どもたちとの交流やそれ以外の若いミュウたちからの敵意、それから発生した争いなど苦い経験を経た末にようやく望みどおりの再会を果たした相手。それが、今彼の前で立ち上がり、静かな瞳でこちらを見つめてくるソルジャー・ブルーその人だった。
「君に会えて嬉しいよ。すぐに姿を見せられず、すまなかった」
「いや…」
 会ったら言ってやろうと考えていた様々な言葉は、実際に彼女を目の前にした途端ぺしゃんと潰れて消え去っていった。
(こんなに若い人が、長になれるものなのか…?)
 テラズ・ナンバー5と戦ったときの彼女はとても力強く、訳も分からず目の前で行われている戦闘の迫力に圧されてただ彼女にしがみつくことしかできなかったジョミーには、とても頼もしい人物に思えた。だが、改めて対峙してみれば、彼女は若く、ミュウの長を務めるにはあまりにも儚く見える。
 華奢な体は、それでも彼女の備える凄みのおかげで一つの貫禄を保っているが、彼女の全身に満ちている、張り詰めて触れれば今にも切れてしまいそうな緊張感が、その儚さを際立たせていた。
「私の見かけが若いことは気にしないで。ミュウはとかく自分の姿を若く保ちたがる」
「なっ…!読んだのか?!」
「いいや、君から洩れてきたんだ。ジョミー、君の思念は私達にとって非常に強いものだからね。読まないことは、かえって難しい」
 何を言っている。やっぱりミュウなんて、信用できたものではない。一瞬でも彼女に親しみを感じかけたのが馬鹿だった。こんな所に、一秒だって長くいられるものか。
 開きかけたジョミーの心を、あっというまに不信が埋め尽くしていく。
「僕を家へ返せ!」
「――分かった」
 切り捨てられるかと思いきや、予想外にあっさりと望みが受け入れられたので、ジョミーは小さくえ、と声を上げてしまう。
「リオ。彼をアタラクシアへ」
 ブルーが背後へ声をかけると、いつの間にそこにいたものか、自分をこの船まで連れてきた青年が前に進み出てきた。
 案内され、部屋を出ようとするジョミーに、ブルーはもう何も言うことはなかった。
 それでも気にかかり、後ろ髪を引かれるようにジョミーは彼女の元を振り返る。すると、目に映ったブルーは白い顔をほのかな光源の中に浮かび上がらせながら、彼方を見据えるような達観した瞳を一点に向けていた。
 その横顔の思いもかけぬ美しさに、動転していたジョミーはそのとき初めて気がついた。





 強引な尋問、初めての力の暴走、そしてブルーから流し込まれた過去の壮絶な記憶に、ジョミーの精神は、一時真っ白に染まった。
「おかえり、ジョミー」
 耳に届くのは、そこまで強引であったにも関わらず、どこまでも優しく包み込むような声。
 彼の視界いっぱいを、ブルーの艶やかな瞳が占めている。
「周りを見たまえ、ジョミー。君は自分でここまで上った」
 彼らの周囲に広がるのは、大気を越えたその先の宇宙空間だった。
 空気などなあるわけはないのに、自然に呼吸している。何の苦もなくその場に留まり続けていられる自分の異常さを、彼はそこでどうしたって自覚するしかなかった。
「君の力はとても強い、ジョミー。なぜだか分かるかい?」
 力なく首を横に振る。
「君が時代の変革に現れた、体制を倒すための獅子だからだよ、ジョミー」
「少なくとも、私はそう信じている」
 変革?獅子?何もかも分からないことだらけで、頭がうまく働かない。
「いや――そんなことは今はいい。今はいいんだ」
「ソルジャー・ブルー……」
 頭を振り、哀しい目をした彼女が肩をささやかな力で掴んでくる。
 細く小さな手が、痛ましかった。
「言わなければならないことがあるんだ、ジョミー」
 苦しげに顔を歪めながらも彼女の瞳は強い意思を込めて輝き、ジョミーを惹きつける。
 思わず状況も忘れ、見入ったそのときだった。

「君は私の子だ」

「――え?」
 途端、体の周りを循環していた空気の流れが、動きを停めてしまったかのようで。

 それが全ての始まりだったのだ。

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