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置場

妄想文を思いつくままに書き散らしています。更新頻度は低めの予定です。

2024.09.21
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2007.12.24
ぽそ、と少し前の記事で呟いたところ、読んでみたいとのお言葉を拍手でいただいたので調子にのって書いてみたシロエとブルーのお話です。当たり前のようにパラレルで現代ものチック、おまけに二人とも幼少です。ブルーとシロエの年齢差は後で訂正が入るかもしれません。
ここから学園ものとリンクさせたかったのですがその前に力尽きました…ので半端ですが、続きは書けるか未定だったりします。
※眠いときに書いたおかげで色々おかしい文章だったので、少し修正しました。とはいえ、あまり変わっていないのが悲しいところです。














 ともだち


「ブルー、早く行こう」
 手を引けば、彼はうん、と返して微笑んだ。彼の笑顔が大好きなシロエも、それを見て嬉しくなり、自分も顔いっぱいの笑みを浮かべてみせた。

 一月前に隣へ越してきたブルーは、3つ年上の、不思議な雰囲気を持つ少年だった。まだ10歳だというのに、大人びた物言いは彼の清雅な美しさを際立たせ、道理の通った言葉は説得力に満ち、耳に心地よく響く。同じ年頃の子どもよりも少しませていながら人見知りの気もあるシロエだったが、ブルーには出会ったその日にすぐに懐き、両親を驚かせたものだ。
 ブルーは体があまり丈夫ではないため、外で遊べることはほとんどなかったが、遊び盛りであるシロエはそれでも彼と一緒にいるのが好きだった。
 今日は近くでお祭りのある日だ。両親とも用事で家を開けており、夜までブルーの家へ預けられたシロエは、最初のうちこそ彼の部屋で大人しく本を読んでいたが、祭りの音が聞こえてくると次第にそちらが気になり始め、集中できなくなってきた。
 パタン、と本を閉じる音にハッとしてその出所に目をやれば、ブルーが見透かすような紅い瞳でこちらを見つめているものだから、集中していなかったのがばれてしまったようでシロエは何とも気まずい思いになった。するとブルーは口を開き、一緒に行こうなんて言うので、驚きと期待を込めていいのと尋ねれば、にっこり微笑みで返された。
「僕も見てみたいんだ。お祭り」
 気持ちが跳ねてうっかり足音も大きく居間を横切ると、夕食の支度をする中年の女性とその傍で新聞を広げている夫が、音につられて目を向けてきた。
「シロエとお祭りを見てきます」
 後から来たブルーはそう言うと、シロエの手をそっと握りしめた。気をつけてね、と声をかける女性にはい、と答えて二人は家を後にする。
 ブルーは彼らのことをおじさん、おばさんと呼び、常に丁寧な態度で礼節をもって接している。彼らもブルーのことを邪険に扱うことは決してなかったが、両者の間には何か一定の距離感があるようで、消し去れない壁が存在しているように見えた。
 どうやら親類のようであったが、それにしてはブルーと彼らにまるで似たところがないのをシロエは不思議に思ったことがある。ブルー自身にもそれを言えば、ブルーは「そうだね」と答えたきり黙り込んでしまったので、その話題はそれ以来出したことがない。
 本当の両親は事故で亡くなったらしい、と両親が話しているのを聞いたのはつい最近のことである。

 あまり急がせてはならない、ブルーは体が弱いんだから、と自分に言い聞かせるが、近付く音に心ははやり、ゆっくり進めていたはずの足は徐々に速まり、気付けばほとんど駆け足になっていた。
「シロエ、待って」
 背後からの声にシロエが振り返る前に、彼の動きについていけずブルーは足を崩して前のめりに倒れた。気付いたシロエが青ざめておたおたする間に、ブルーはちょうど道の横にあった石段へと打ち付けた膝を押さえて移動した。顔を蒼白にしたシロエも、おずおずと隣へ腰掛ける。
「……ごめんね。ブルー」
 しばらくして顔色の戻ったブルーに顔をうつむけながら謝ると、ブルーはいいやと首を振った。
「草の上だったから擦りむいてもないし、大丈夫だよ」
 そう言いながらも彼が足を上下にさするのを見て、シロエは不安を隠しきれない。
「痛いの?」
 うろたえるシロエに、ブルーは子どもらしからぬ顔で苦笑した。
「平気だよ。ただね、シロエ、僕は足を少し悪くしているからあまり走れないんだ」
 そんなことは初めて知った。それをブルーは何でもないことのように言うものだから、よけいに悲しくて。
 結局その日は祭りへは行けず、そのまま家へと戻ったのだった。



 そんなことがあってからも、ブルーとはしょっちゅう一緒に遊んでいたが、彼はそれからから一年も経たないうちにいなくなってしまった。彼と暮らしていたあの夫婦はどうやら一緒ではないという。それについては、近所で嫌な噂がひっそりと流れていた。
 両親は他人のそんな無責任な噂に関わろうとしなかったが、シロエは別れを告げる間もなく去っていった友人の情報を何とか集めようと、大人たちが集まる場で時折出るその話題には熱心に耳を澄ませていた。他人の不幸を目を輝かせながら噂する者ほど、周囲への注意を怠ることを知ったのもそのときだ。
 しかし大半は言っていることがよく分からず、彼がその真の意味を知るのはもっと成長してからのこととなる。
 とにかくそのときの彼には、ブルーと会えないことがただ寂しく、つまらなく感じられた。

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