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置場

妄想文を思いつくままに書き散らしています。更新頻度は低めの予定です。

2024.09.21
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2007.11.10

「地球へ・・・」ジョミブル
「綺麗なお姉さんは好きですか」のCMが昔からのお気に入りです。見るたび「大好きです!」と心の中で叫んだものです。ヤギラくんが出てたバージョンもよかったなあ。ヤギラくん可愛かった。
…と、昔から出演者とシチュエーションばかりに注目していたので何のCMだかはいまだによく分かっていません。何だったっけ……
















 綺麗な人




 今日は久々に講義も訓練も入っていない休みの日だったので、骨休めをしようと広場を訪れたところで子どもたちに捕まった。散々にあちこち連れ回され、広場へと戻るころにはすっかり疲れ果てていたジョミーは、まだ遊ぼうという子どもたちの誘いを断り、原っぱを跳ねる彼らを傍から眺められる位置に移動していた。

 シャングリラの広場には送風システムが設置されており、段階分けされた風がランダムに送られるよう設定されている。
 優しくそよそよと髪の毛を揺らす風、ヒタヒタと頬を叩き付ける風、波のようにうねりながら場を荒らし持ち物をさらっていく風など、その種類も強度も様々にある。今送られてくるのはほんのそよ風で、疲れた体に優しく吹き付けるそれが心地良い。
 それにしても、まったく子どもらの好奇心には目を見張る。ジョミー自身もいまだ好奇心溢れる活達な少年だが、彼らのタフさはそれとはまた少し異なるものだ。
(ミュウで虚弱っていっても、これくらいの遊び盛りだと普通とそんなに変わりないんだな)
 きゃあきゃあと騒がしい子どもたちを目にしながらそんなことを思い、ジョミーはふっと唇を綻ばせた。
「楽しそうだね」
「うわあっ!」
 突如聞こえてきた背後からの声に思わず頓狂な声をあげるが、すぐに声の主に思い当たった。ため息を吐き、こわばった身から力を抜く。
 あえてゆっくりと、ジョミーは後ろへ体を反していった。そうして振り返った先で、クスクスと笑いを隠さないのは。
「ソルジャー…」
「やあ、ジョミー」
 驚いた?と意地悪く尋ねてくる相手に何か言ってやろうと口を開きかけたところで、
「きゃあ、ソルジャーだ!」
「いついらっしゃったんですか?」
 ソルジャー、ソルジャーと遊びそっちのけに子どもたちが駆け寄ってきたおかげで、周辺はとたんに騒がしくなってくる。
「今来たばかりだよ。今日は調子がいいから船内を見回っているところなんだ」
 じゃあわたしも行きます!ぼくもぼくもとわめく子どもたちを、ブルーは微笑みひとつで黙らせる。
「危ないからね。君たちはここで遊んでおいで」
 ジョミーは連れていってしまってもいいかな、と当の本人よりも先に子どもらに尋ねると、彼らは名残惜しげながらも一様にコクリと頷いた。ジョミーとしてはいささか納得いきかねるが、ブルーと2人で散歩というのはとても魅力的な話なので不満を口にすることはない。
 まとわりつく子どもたちの頭を、ブルーは一つ一つ優しい手つきで撫でている。
撫でられる彼らの、猫の子が喉を鳴らすかのごとき満足げな、誇らしげな表情といったら。
 羨ましいな。密かにポツリとそう思った。素直にそれを受けることのできる彼らの無邪気さは、今の自分にはただまぶしいばかりだ。
 ふと、ブルーは子どもたちにやっていた視線を外し、顔を上げて遠くを見るかのように両目を細めた。その先はただの突き当たりで、気にかかるものは何もないはずだが。ジョミーが不思議に思ったちょうどそのとき、システム設定が変わったのだろう、ザアッと強めの風が頬を撫でながら吹き抜けていった。
「吹いてきたね」
 風の吹き付けてくる方向に目線を据えたブルーは、風になびき乱される髪を片手で押さえながら、その繊細な指先で髪の流れを整えるようにサラリとすいた。
 控えめな動きであるが、それはほんの小さな子どもたちでさえも頬を染め、言葉も無くしてしまうほどに魅了するには充分な光景だった。


 ――こんなにも、遠い。
 手をのばせば触れられるほどの距離にいるのに、彼と自分とはこんなにも違い遠いのだと、ジョミーは痛みを堪えるようにして眉をひそめながら思った。
 そして、どうしようもなく綺麗なその人に、どうしようもないほどに強く――焦がれた。
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