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置場

妄想文を思いつくままに書き散らしています。更新頻度は低めの予定です。

2024.11.23
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2007.11.27

ひとつ下の記事の親子なジョミーとブルーの妄想です。女体化ネタですのでご注意ください。そんな言葉見るだけでも嫌だという方は本当にすみません…
ジョミーとブルーが実の親子です。
興味のそそられた方はこちらを読んだ上で、バッチ来いとおっしゃられる方だけどうぞ。とはいってもいつも通り大したことは何もありませんが…














※1番の設定を踏まえた上でご覧ください。



 目の前の、自分とさほど年の変わらない少女のようにさえ見える人が、自分の母なのだという。
(そうは思えないのが問題なんだよな…)
 吐いたため息を知ってか知らずか、廊下の前方からやってくる彼女は、常のようにひたすら美しい。
「最近は随分と勉強熱心だそうだね」
 そうしてちょうど廊下の中央でかち合うと、ブルーは片手に書類の束を抱え持ったジョミーを眺め、言った。
「必死なんです、あなたに追い付くために」
 別に後ろ暗いことがあるわけでもないが隠し事が見つかったようで気恥ずかしく、ついぶっきらぼうに答えてしまう。すぐさま後悔するが、対するブルーがふわりと微笑んでみせたので、一瞬でそんなことも忘れて引き込まれるように見入った。
 儚げに憂いをおびた笑み、人の悪い顔、強い意思を感じさせる顔など、この数年で様々な彼女の表情を見てきたが、そんな無邪気な微笑みは滅多に見られないもので。
「嬉しいな。知識を積極的に取り込むのは重要なことだよ、ジョミー」
 素晴らしい、と手放しで褒められ、喜ぶより先に面映さが立つ。表情こそそのままだが、下ろした腕の先で指が意味なくまごついた。
 その指が、唐突に低い体温にさらわれた。
 ドクリと胸が高鳴る。
 手を取った彼女の指を意識しないことはジョミーには難しく、鼓動は加速していくばかりだ。白く、色素の存在しない彼女の肌は、柔らかく、少し冷たい。繊細なその両の手に、自身のそれがそっと包み込まれた。
 心臓の音が、ドクドクと耳にうるさい。
「大きな手になったね」
「せ、成長期ですからっ」
 どもった声は、どうやら震えてしまっている。おかしく思われはしないだろうか。
「優しい手だ」
 耳元で響く音は大きくなるばかりで、このままでは手を通じて彼女に届きはしないだろうかと不安になる。冷たい彼女の手に流れ込む自分の体温と共に、思考が流れてはしまわないか。
 そんな思考に気を取られ、微妙に逸らしていた視線をうっかりまともに相手へ向けてしまったその途端、飛び込んできた伏せた目も間近なその姿に、心身ともに停止状態へと陥った。
 長いまつげが縁取る紅い瞳は、まさに至高の芸術だ。その芸術が、徐々に目線を上げてその真の威力を存分に発揮する角度まで移動する様子が、時の止まったジョミーの目にスローモーションのように映った。開かれた唇のほんのりとした赤みにさえ、どうしようもなく惹かれる。
「ジョミー」
「は、はい!」
 陶酔しきった耳に届く声に、急激に夢から現実へと引き戻されたような心地だ。








――その敬語はどうにかならないかな。
 まだ出会って間もないころ、困ったようにそう言われたことがある。
 彼女の苦しみや悲しみ、そしてそれを乗り越えてきた強さを知った後に、今さらそんなことは出来るわけがない。理由はそんなことだったのだけど、どうやら彼女は拒絶の可能性を考えていたらしい。
「君に母親と思えだなんて言わないよ。僕にはその資格がないから。君にとっての母親は、一人しかいないのだろう?」
 そんなことはないと言いかけて、なぜだか言葉に詰まったことを覚えている。








「本当に、大きくなった」
 感慨深い呟きが、耳をくすぐり流れていく。
 ブルー、と唇が彼女の名前の形を象ろうとしたところで、
「もう、正式にソルジャーの後継を君に任せたいと思っている」
 静かだが、聞き違えることのない明瞭さで彼女は断言した。そして顔を俯け、握り込んだジョミーの手をじっと見つめる。
「今の君なら、きっとこの大きな手で皆を包み込み、導いてくれるだろう」
 それは無理だと思えるのに、ブルーの語りかけるような声に肯きたくなる衝動を覚えてしまいそうだ。
 と、彼女は顔を上げ、ジョミーへとひたと視線を合わせた。見つめるその間近な紅瞳に少なからず覚えた動揺はおくびにも出さず、彼もしっかりと見つめ返す。
 しばしの沈黙が流れた後、ブルーが口を開いた。
「少しかがんでくれないかい」
「?はい。――っ!」
 鼻先を、微かな香りが狂おしく掠めていった。








――母親と思えとは言わないよ。僕にはその資格がない。それに、君にとっての母親は、一人しかいないのだろう?
「そんなこと…」
 ないと言い切ることがなぜだか出来ず、言葉は尻つぼみに終わる。気まずい沈黙に陥るかと思われたが、ブルーはそれをものともせず、元気のしぼんだ相手へニコリと微笑みかけた。
「それよりジョミー、ちょっといいかい?」
「何でしょうか――えっ?!」
 腕を回して抱きしめられる。突然の事態に、驚きの声が洩れ出た。
「ああ、嬉しいな。本当はね、ずっとこうしてみたかったんだ」
 いつも遠くから見ることしか出来なかったから。
 身長差はほとんどない、というよりこちちらの方がいくらか低いくらいだが、線の細さは圧倒的に異なっている。その華奢な体を慎重に抱き返すと、柔らかな感触に落ち着かない気持ちにさせられた。
 やっぱりママとは違う。感じたのはそんなことだった。体を密着させていた状態で、その声は常より確かにブルーへ届いただろう。けれど彼女は何も言わなかったし、抱きしめてくる腕から伝わる温かな感情は、何よりジョミーを幸せな気持ちにさせた。








「ブルー、僕は手がふさがっていまして」
 なるべく平常を装い、離れるよう遠まわしに頼むが、
「もう少しだけだよ」
 優しげだが横暴なその言葉に、ジョミーはしばらくは無理だと悟る。

 今はあのころとは違う。ジョミーがかがまないことには抱きしめにくいほど成長した体躯からも時の流れは如実に表れているし、ジョミーの心も、見た目から図れぬほどあの時とは決定的に違っている。今の自分が力の限り抱きしめたら壊してしまえそうな彼女の肢体を前に、平静な気持ちでいられることは、もうないのだ。
 あれから数年が経った。思念の操作は相変わらず苦手分野だが、遮蔽だけは格段に上達した。何よりも先に覚えるべきことだと集中的に訓練させられたのが功を奏したらしく、今ではそのことに言葉では足らないほど感謝している。

(決して誰にも知られてはならない想いがある)

 震える手を背中に回しかけて、止めた。そうして戒めるように強く、握りしめながら下ろしていく。

 自分にはその資格がないのだ、と言い聞かせるような呟きが、頭の中で虚しく響いた。









 14歳ジョミーと17、8歳ジョミーということで。

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