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置場

妄想文を思いつくままに書き散らしています。更新頻度は低めの予定です。

2024.09.21
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2007.12.01

「地球へ・・・」
ブルーが女性で妊娠する話です。ネタメモに書いたものが思いのほか評判が良かったもので調子に乗ってアップ。とはいってもネタメモとは別設定です。
拍手で頂いた「処女受胎」というコメントに萌えた結果こんなものが出来てしまいました…
※ブルーが女性な上、子どもはジョミーという設定です。続きも書くとすればジョミブルになります。誰にでも受け入れられる内容ではないと思いますので、ご注意の上よろしければ続きよりどうぞ。
















 発覚



 少し前より感じていた体調の異変が、その日はよりひどかった。なかなか下がらない微熱は体の倦怠感を高めるばかりで、それだけならまだしも、何よりひどいのは精神の乱れであった。それは常に感情が凪いで穏やかな彼女には珍しいことで。
 誰に会うのさえも煩わしかったため、久しぶりに完全休暇をとった。誰も部屋に立ち入らせないよう命じた彼女は、己の存在のみの部屋で、広いベッドに体を休めていた。
 そんな状態であっても、緊急の事態にいち早く気付き飛び出していけたところは、確かにソルジャーと呼ぶにふさわしい。
 敵の艦を睨み据えながら、ブルーは重い体に無理矢理力を循環させ、充填したそれを間髪いれずに放った。

 その瞬間に感じた違和感、ドクリと体を巡った脈動にああそうか、と悟る。
 とても信じがたいことではあったけれど、その確かな存在感はそれを信じさせるのに充分なものであったから。





 どうやら妊娠したようだ。部屋に呼び集めたドクターと長老たちにそう告げると、驚愕の思念が辺りに飛び交った。それでも部屋の外には漏らさなかった辺りはさすがというべきか。ベッドの中、疲労の残る体を起こしながら、ブルーはそんなことを思った。
「どういうことです?!」
「妊娠だなんて…ええと、それは要するに誰かと交渉を持った結果ということで…」
「誰だその不届き者は?!成敗してくれるわ!」
「妊娠…」
「お、落ち着いてください、とりあえずソルジャーのお話を、」
 比較的落ち着きが残るドクター・ノルディが宥めにかかる。…が、少々力不足だったようで、興奮した皆にすごい形相で詰め寄られるという哀れな事態に陥ったが、それで皆の気も少しは落ち着いたらしい。
 眉間にこれまで見たどのときよりも深い皺を刻みながら、ハーレイはソルジャー・ブルーへと訊ねる。
「…どういうことでしょうか、ソルジャー・ブルー」
「どうもこうもないよ。妊娠した、そのままの意味だ」
 応じるブルー自身は落ち着いたもので、普段と何ら変わりないように見える。冗談だろうと笑い飛ばしてやりたいほどに。
 それなのに、普段通りの顔で、胎内に子どもがいると、そう言うのだ、彼女は。ハーレイの顔がぐっと険しくなった。
「あ、相手は誰なのです?ソルジャー。いつの間にそんな…」
 エラの声は動揺を隠し切れず震えている。他の面々も、表面上はある程度の落ち着きを見せているが目は血走り、ブルーが相手の名を告げればその人物の末路が容易に想像できるほどの形相だった。
(ああ、まさかあのヒルマン教授まで……)
 どんなときでも温厚であった彼の人さえも鬼気迫る表情なのを見て、ノルディは恐ろしさのあまり年甲斐もなく泣きたくなってきた。失言をすれば、その場でどうなってもおかしくないような空気に耐えながら、彼はやや下がった場所で遣り取りを見つめるしかなかった。

 エラの問いに、静かな表情を崩さぬままブルーは口を開く。
「相手はいない」
「そんな馬鹿な」
 思わずノルディが声を上げると、ソルジャーと長老達の視線が一斉に降りかかってきたので、身を縮こまらせながらも医者としての誇りにかけて発言する。
「相手もなしに妊娠だなんてそんなことは在り得ないでしょう。その…行為は無しにという意味でしたら体外受精などがありますから、そういう意味でしたら申し訳ありませんが…」
 周囲からの異様な迫力に呑まれ、後半に行くにつれて言葉は尻すぼみになっていった。
 そんな彼に対して、ソルジャーはニコリと微笑みかけた。その美しさに緊張も忘れ、思わず惚ける。
「本当だよ、ノルディ。本当に相手はいないんだ」
 目を落としながら言葉を続ける。
「――次代のソルジャーが必要だと、言っただろう?」
 その言葉に、彼女以外のその場の者すべてがハッとした。確かにそんな話はあった、とノルディはそのときのことを思い出す。

 時間がないのだ、と彼女は言った。彼女の体が限界にきているのは確かな事実で、それを認めようとしない――認めたくないのだろう長老達を否が応にも納得させるために、自分はその会議に呼ばれたのだ。
 彼女の体の衰弱具合を数値に表して、なるべく感情を乗せずに淡々と述べていく。そうしなければとても口にすることなど出来なかった。言葉が進むほどに、皆の顔は沈痛なものになっていったが、ブルーだけは顔色一つ変えることはなく。
――次のソルジャーを見出さなければならない。
 シン、と静まり返るなか放たれた一言は、その内包する意味の耐え難い重さを如実に伝えてきたのだった。

「おそらくそれが原因だ。私が強いミュウを望んだことが反映されて――」
 そっと腹を撫でる。
「出来た子なんだろう。だから誰との子どもでもない、私だけの子どもだよ」
 穏やかに言い切り、彼女はふう、と息を吐いた。そうして呆然とした表情のままである者たちを見回し、
「みんなにも協力してほしいんだ。なにせ妊娠や出産の知識など、我々はほとんど持っていないのだからね」
 完璧な笑顔を崩さぬまま、そう言った。
 そして、その日ブルーが思念に乗せて発表した事実は皆を驚愕に陥れ、シャングリラは一時かつてない混乱状態に陥った。



 それから、時は慌しく過ぎていった。
 エラやヒルマンは妊娠に関する資料をかき集め、ドクター・ノルディはその微々たる資料に頭を抱えながらも、胎児の健やかな成長のための方策や出産の際に少しでも負担を軽減する方法を検討した。ハーレイは、「ソルジャー妊娠」の事実にいまだ驚愕さめやらず、何やら落ち込む多数の者たちを叱咤激励し、月満ちて子どもが産まれるまでは彼女に負担をかけることがないよう気を巡らせた。
 そしてゼルは、皆に必死に懇願されて日のほとんどをベッドに縫い付けられた状態の彼女に、時間の許す限り会いに行った。そのたびブルーのそばにはフィシスがいたので、ゼルは彼女の分まで持参するようになった林檎の皮をむきながら、「最近の若い者は…」とお決まりの愚痴をこぼしつつシャングリラの様子を報告した。
 5ヶ月になるが、いまだ彼女のお腹はほとんど目立たない。そして、いつでも飛び出せるようにとソルジャー服着用のままである。もっと大きくなったら着替えるよ、と、「どうかなるべく体に負担のかけないものを」と困りきった顔をするノルディに答えるのがこの頃は常であった。
「フィシス、少し触ってみて」
 就寝時間が近くなりドクターも長老も退出した中、一人だけ残った彼女の手を取って、ブルーは自らの腹へと導いた。
「分かるかな」
「まあ…動いていますわ」
「だろう?勘違いかとも思ったんだけど」
 確かな胎動を感じ、フィシスはうっとりとした表情を浮かべている。
「この子がいずれ、皆を導いてくれる」
 その言葉にハッとした彼女が先ほどとは打って変わった悲しさをその顔に浮かべると、てのひらと共に優しい言葉が差し向けられた。
「大丈夫だよ。最近は大分調子がいいんだ。まるでこの子が力を分けてくれているみたいに」
「…そうですね。その子はきっと、強い子に育つでしょうから」
「それは予知かい、フィシス」
「いいえ。ですが、ソルジャーの御子ですもの」
 そう言って腹をもう一撫でし、笑みを浮かべる。
 お休みなさい、と告げてから彼女が退出した後も、ブルーはそのまま眠りにつく気になれずに天井を見上げた。一日中ベッドに縛り付けられているせいで、眠りはそう誘惑的なものでもない。
 とはいっても胎児の健やかなる育成のためには規則正しい生活は欠かせない。仕方無しに体を横たえたそのとき、またも胎児の動きが感じられた。
 ずいぶんとやんちゃな子だ。クスリとしながら腹に手を当てる。
(君はミュウの柱となり、皆を導くことだろう――地球へ)
 その日が楽しみだ。語りかけながら、目を閉じ、やがて訪れるだろう眠りに身をゆだねる体勢に入る。
(ミュウの希望、私の太陽)
 君の強さは知っている。体も心も、誰より強いミュウとなるだろう。でもね。こそりと小さく呟く。
 そんなことを言ってはいけないのだろうけど、たとえ力がなかったとしても君がいればそれだけで、どんなときより幸せなんだ。

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