置場
妄想文を思いつくままに書き散らしています。更新頻度は低めの予定です。
2007.08.04
「地球へ・・・」ジョミーとブルー
軽く思春期ジョミー。気がつけばソルジャー・ブルーがベッドの中にいる話ばかり書いてます(色っぽい意味にあらず)。今度はアクティブなソルジャー・ブルーを書きたいなあ。
愚か者
何だろう。あなたに伝えたいことがあるはずなのに、それが何なのか分からない。
とても大事なことなのだけど。
あなたに会うと胸は何かがつかえてしまったかのように苦しく、呼吸や歩行などいつも当たり前に行っていたことも分からなくなってしまう。
会わなければそんな苦しみはないが、それはとても辛い。苦しいことの方がマシだと思えるくらいに。
「どうすればいいんでしょう、ソルジャー・ブルー」
呟いた僕に、ソルジャー・ブルーはベッドから身を乗り出すようにして真剣な面持ちで訊ねた。
「何がだい、ジョミー?なにかあった?」
「いえ、そんなわけでは」
「ではどうした?そんなに泣きそうな顔をして」
近づいてきたソルジャー・ブルーの顔にどぎまぎした僕はほんの少し後退してしまう。嫌なわけでは決してないのだけれど。
「――僕の問題だと思うんです。最近は前以上に精神がグルグルしていて不安定で。でも」
意を決し、ソルジャー・ブルーに目線を合わせる。見透かすような澄んだ赤に思わず腰が引けそうになるが、あまりに美しいそれから目を離せない。魅せられるまま紡いだ言葉は、我ながら熱に浮かされたようにおぼつかない発声だった。
「あなたも関係している気がするんです。なぜかは自分でもよく分からないけど」
「僕?」
と彼が首を傾げ、まもなくその首を元の状態に戻すまでの一連の動作さえも、僕は幻惑されたように見つめた。ソルジャー・ブルーはそんな僕ににっこりと笑いかけ、伸ばした手で後頭部をよしよしと撫でた。
――もうそんな年ではないのに。小さな不満は、彼に触れられるという大きな満足の中に呑み込まれ、たちどころに姿を失っていく。
「気にすることはない。君は今何事にも心の揺れやすい年頃だから、そのせいだろう」
…あなたがこんなにも心の中を占めているのはなぜかという要点に対する返答にはなっていないが。穏やかな声音の説得力に惑わされ、こっくりと頷いてしまう。するとソルジャー・ブルーはますます美しく微笑んだ。
「いい子だね」
耳のあたりの絡まった髪を細い指で梳かれ、心地よさに目を閉じる。
――ああ、また。
あなたの深い声に包まれると、自分の内にある未解決な事柄を忘れてしまいそうになる。
彼に触れられることで満足して忘れてしまいそうになる。自分ももっと彼に触れたいと願う気持ちがあることを。
あなたの優しさに満足して、忘れそうになるんだ。本当は満足しきれていないことに。これでは足りないと、何かを強く焦がれる思いがあることに。
僕が抱えているものの正体を、彼は本当は知っているのではないかとふとした瞬間に思う。根拠は何もないけれど。
だとすれば、きっと彼はそれを僕に忘れさせるつもりなのだろう。
だってあなたはこんなにも僕を満足させてしまう。胸の苦しみも呼吸のままならさも、その指先ひとつ、微笑みひとつで全て解消させてしまうのだから。
本当は、満足にはまだ足りないはずなのに。苦しみが消え去ることも、ないはずなのに。
でもきっと、それに気付かずにすべて忘れてしまった方が楽なのだ――多分。
忘れたくない、とそれでも思ってしまう自分は、きっと誰より愚かしい。
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